日本で一番古いふたつの夢とはなんでしょうか?

日本で一番古いふたつの夢とはなんでしょうか?

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現在わかっているものの中で、日本の最も古い夢の記録は、『古事記』に出てくる夢の話です。

ひとつは、神のお告げによって悪神を退治する夢。

神武天皇が、兵を率いて熊野にやってくると、恐ろしい怪物の熊が現われて、天皇も兵も気絶させられてしまいます。一人だけ目覚めた天皇が、
「あの熊が相手では、どう闘ったらいいかわからん」
と困惑していると、
「私は熊野のタカクラジと申す者です。この剣で熊を退治なさってください」
と太刀を捧げました。神武天皇がその太刀を受け取ると、昏倒(こんとう)していた兵たちが皆目を覚まし、熊野の悪神であった熊を倒すことができたのです。
「お前のおかげで助かった」
と天皇が喜ぶと、タカクラジは言いました。

「実は、夢に天照大神と高木の神が現われて、神武天皇が困っているから、この太刀を持って助けに行けとおっしゃいました。そして、私の倉の屋根に穴をあけて、太刀を落としていかれたのです。翌朝目覚めて倉を見たら、本当に太刀があったので、さっそくお届けに参ったわけです」

この話では、夢の中で神が「お告げ」をしているということから、日本人が夢を宣託と考えていたのがわかります。

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もうひとつは、垂仁天皇と皇后のサホビメの話です。

サホビメには、サホビコという兄がいます。ところが彼には、天皇を暗殺しようという邪心がありました。兄に、
「俺と天皇(夫)とどっちが大事だ」
とつめよられたサホビメは、つい「お兄さんのほうが大切」と答えてしまい、暗殺計画に参加させられてしまいます。
「これで、寝ている天皇を刺し殺せ」
と小刀を持たされたサホビメは、自分の膝枕で眠っている天皇を殺そうとしますが、悲しみがこみ上げてきて殺せません。思わずこぼした涙が天皇の頬にかかり、天皇は目を覚まします。

「不思議な夢を見ていた。佐保のほうから雨が降ってきて、私の顔を濡らすのだ。それに、錦のような小さな蛇が、私の首に巻き付いたのだ」
サホビメは、天皇を裏切れないと思い、兄の謀略を天皇に話してしまうのです。そして、垂仁天皇は、サホビコを征伐することになります。

こちらの話で興味深いのは、夢がご宣託や占いでなく、夢判断に通じる心理学的要素を含んでいるということです。

天皇は、しかたなく暗殺しようとしていた皇后サホビメの表情から、何か不穏なものを感じており、身の危険を無意識に予感していたのでしょう。それが錦色のヘビとなって表われています。

また、サホビメの存在を、夢では「左保のほう」と表現し、涙が雨になっているあたり、実に象徴的な表れ方をしていると思われます。

このふたつの話を見る限り、古代の日本人は、夢を宣託としてだけでなく、現代にも通じる心理の表現メディアとして、二元的に考えていたのかもしれません。

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